須川展也サックスリサイタル その1

2012.03.12.12:14

1年前の3月11日、私は恵比寿にライブを見に行く予定だった。 だが、東日本大震災の影響で会場に行く足は奪われ、ライブも中止となった。 そして1年後の3月11日。 私は「3.11 あの日をわすれない 東日本大震災 須川展也サックスリサイタル」を見に行った。 ひと月ほど前、偶然、このリサイタルのことを知り、演奏曲目のなかに樋口さん編曲のドビュッシー「美しい夕暮れ」があることを知った。 私たちが樋口作品を生で聴く機会は、ほとんどないに等しい。 この先、生きている間に、はたしてあと何回、樋口作品を生で聴ける機会があるだろうか。 おそらく、ほとんどないに違いない。 そう考えると、編曲作品とはいえ、この機会をみすみす逃すわけにはいかないと思った。 しかし、行くことに迷いもあった。 会場の横須賀は片道2時間半もかかる遠距離。 演奏曲目は予告なく変更される場合もあると書いてある。 もし、「美しい夕暮れ」が演奏されなかったら… 昨年の八千代座の苦い思い出がよみがえってくる。 もう、二度とあんな思いはしたくない。 行くべきか、やめるべきか・・・葛藤が続く。 でも、結局、私は「行く」という選択をした。 行かないで「美しい夕暮れ」を聞き逃して後悔するよりは、行って演奏されなかったときのほうが、まだ、あきらめがつくと思ったからだ。 行けば必ず、生で須川さんの演奏を聴くことはできる。 それに、今回のリサイタルのプログラムは、「美しい夕暮れ」以外にも、朝川朋之、吉松隆氏、小六禮次郎ら、邦人作曲家の作・編曲作品を演奏するという点で、私にとって、非常に興味のあるプログラムであった。 さらにシャーマン兄弟のディズニー音楽(余談だが、シャーマン兄弟の兄、ロバートさんは3/7に亡くなった)や、ハーラインの「星に願いを」など、樋口さんが過去に素材として取り上げたことのある作品も演奏される。 仮に「美しい夕暮れ」が聴けなかったとしても、それだけで、十分、行く価値はある。 いや、本当はそうとでも思わないと、「美しい夕暮れ」をやらなかったときのショックから立ち直れず、「行く」という決心ができなかったのかもしれない。 とにかく、こうして私は、この日のリサイタルに出かけた。 会場は、横須賀三浦教育会館。 ホールのキャパは椅子席で150人ほど。 音楽専用ホールではなく、簡素な多目的ホールで、お世辞にも演奏会場として恵まれているとはいえない。 会場に飾られた看板も、いかにも手作りといった感じだ。 でも、私はこういう会場でのコンサートも決して嫌いじゃない。 この手のコンサートは、何よりも演奏者と客席が近いのが魅力だ。 一段高いステージから観客を見降ろすではなく、観客と同じフロアで演奏することで、演奏者と観客との間に自然とふれあいが生み出されるのだ。 リサイタルはなかなかの盛会だった。 用意された椅子だけでは足りず、ステージ上手側にも椅子が追加されるほどの入り。 観客の中には、吹奏楽をやっている高校生たちの姿も数多く見受けられた。 つづく

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